なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 ロビーには既に萩原さんがいて、携帯で誰かと話してた。

 足早に近づいていくと、電話で話したまま、『じゃ、行こう』と小さく言って、車寄せの方へ歩く。


 ホテルから出ると、冷たい風が顔を撫で、冷たい空気が肺に広がった。


 ぶるっと震えるくらい寒くて、


 吐く息も白い。


 そんな私の肩をぎゅっと抱き寄せるから、私の体は萩原さんの体にべったりとくっつくことになるわけで。


 うわっ。やばい。

 ドキッとしちゃうけど、なんか嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったい感じ。


 仕立てがよく高そうなコートに首にかけただけのストール。

 私なんかが隣にいていいのかなって思っちゃう。


 そのくらいかっこいい。


 その一言だ。


 電話はまだ終わらないみたいだけど、忘れずに私のことを気にかけてくれる。

 いつもの意地悪な顔はどこへやら。

 動作のひとつひとつがエレガントで、

 ふわっと香る香水も、どこのだか分からないけど、近くに寄らないと分からない程度にしかつけていない。

 それがまたセクシー。

 またも私の身体だけは反応して、理性はやはりストップをかける。

 無意識に腕を萩原さんの腰に回してしまい、一瞬動きが止まった萩原さんは、ドアを開いたタクシーに『乗らない』と合図する。

 胸元に顔を預ければ、大きくて温かい手が髪を撫でる。

 あったかい。

 どこも行かないで、このままでいいかも。

 電話が終わるまで、こうしていていいのかな。

 規則的に髪に指を通すその触り方が、心地よくて、眠気を誘う。

 なんて大胆な行動に出たんだろう。

 こんなこと、なかったのに。

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