なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
到着した場所は、高級マンションの最上階。
こんな私でも人生において何度かは男性に食事に連れていってもらったことがある。
そりゃぁね、冬山君と行ったようなファミレスなんかが多いわけだけど、でも、それなりのレストランにだって行ったことあるよ。
さすがにどっかのマンションの最上階は、初めて。
なんでここなんだろう? ここに何があるんだろう。
私の疑問に気づくことなく萩原さんは慣れた様子で歩いて行く。
どっかの歴史のあるホテルかと思うようなロビーは、ブラウンとホワイトを基調としたオールドイングランド風な内装でとてもクラシカル。
もしかして、このホテルのようなマンションにも部屋があるんじゃ?
ドキンとした心臓に、場違いな気がしてきてしまう。
胸ポケからカードを取りだして、かざす。
「なんだかすごいマンションですね」
「ん? そう?」
そうです!
一体どんな生活をしてるんだか。
「ここの食事と酒は気に入ってんだよ」
「そ、そうなんですね。でもここってマンションですよね?」
なんかちょっと、モヤッとしてる自分がいて、なんかやだ。
「なんか変なこと考えてるだろ?」
私の胸の内を読んで、にたっと左の口角だけ上げた。
「いえ、べべべべ別に何もそんな...」
もうやだ。バレバレだし。恥ずかしい。
「そういうのも可愛くて新鮮。でも安心しな、ここはクライアントが住んでいるだけで、仕事で来るだけだから」
言いながらまた肩をぐっと引き寄せるから、何も言えなくなるわけで、ただ頷くしかない。
「でも」
「でも? なんですか?」
「酒はほどほどにしとけよ」
大丈夫ですからっ! と、焦って顔の前でぶんぶん手を振っているところで、エレベーターが開いた。