なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
顔の前で手を振り続ける私を不思議そうな顔をして首をかしげて眺めている女性になんて、気づかなかった。
「え、何、くさいの?」
低くて落ち着きのある声が聞こえた方を反射的に向くと、そこには腰に手を預けて眉間に皺を寄せてる綺麗な女性が一人、立っていた。
ハーフ? かな? 小さい顔にぱっちりした目に高い鼻。
品のあるワンピースはバーゲンでなんて買わないんだろうなって思わせる。
それに加え、服に着られていない。服を操ってるってかんじで格好いい。
あははははと豪快な笑いを上げ、相変わらずだなと言いながら私の横をするりと抜けて、先に降りる萩原さんのあとに遅れないように着いてく。
「久し振りだな」
「何年ぶりかしらね。変わらないね」
ハグ!
キス!!!
厳密にはしてないけど。両頬にちゅっとやってる。
斬新! 初めて見た。ちょっとショックだけど。
「こちらが奥様?」
「いや」
疑い無く確信した感じで、上品な笑みを浮かべて私と目をしっかりと合わせて言ったこの女性の言葉に、脳天に雷が落ちるような衝撃を受けた。
『こちらが奥様?』
萩原さん、結婚してたの?
確かにしててもおかしくない。なんだかよく分からないけどすごい仕事してそうな感じだし。
萩原さんの間髪入れない否定に、女性は慣れたように『あら失礼』とつなげ、私にごめんなさいという顔をしてて、
どうしたらいいのか分からずに、ただこくりと頷くことしかできなかった。