なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
食事の味なんて覚えてない。
萩原さんと二人で食事かと思ったんだけど、違った。
案内されたテーブルにはすでに男性が一人いて、私たちを捉えると立ち上がって、手を上げて挨拶した。
北島さんという男性は萩原さんとは昔からの友人件、ビジネスパートナーの一人で、この綺麗な女性、片桐さんは北島さんの婚約者ということだ。
フランス人とのハーフで語学も堪能。仕事も忙しいのか、食事の間に何度も電話がかかってきて、そのたびに席を外していた。
私は最初に聞いたあの言葉が気になって気になって、何を話したかなんて覚えていないし、話をふられたけど曖昧にしてしまって、もしかしたら萩原さんに恥をかかせてしまったかもしれない。
途中で何度か、『どうした?』 と、萩原さんに声をかけられたけど、笑ってごまかした。
とにかく、この場を早く去りたかった。
しかし、たっぷりと3時間は食事に費やした。
片桐さんはシャンパンがお好きなようで、美味しそうに飲みながら北島さんとの昔話を話してくれた。
二人はこのマンションに住んでいて、しかも同じ階にそれぞれ部屋を持っている。
その昔、北島さんは薬をシャンパンで飲んでぶっ倒れたというびっくりする話を笑いながら楽しそうに話し、北島さんはそれを聞いてただ笑っているだけで、
なんか、がしっとした強い絆で繋がっているんだなぁって思って、素敵だな、いいなって思う自分もいた。
そんなこんなで、カクテルを4杯飲み干した時にはけっこう酔いも回っていて、ほんのり体も熱くなっていて、熱っぽい。
「もう帰るけど、歩ける?」
耳元で囁かれたら、ゾクリときて、大丈夫ですとしっかりした口調で答える。