なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 なんか、集中できない。

 なんか、心を手放せない。

 ヨガにすら入り込めない。

 
 落ちるわぁ。



「で、なっちゃんね、なんなの今日は? 流行り病?」

 流行り病ってまた古風なっ。

「やめてくださいよ、その言いかた」

「だーってあんた朝からぼっけーっとしてて、心ここにあらずってかんじだよ」

「...分かります?」

「長い付き合いですから。それに毎日顔合わせてりゃ分かるわ」

「ですよねー」


 恋の病なら許すけどそれ以外は許さん! と、なんともまぁ理不尽な発言で。

 会員さん、それとはまた別のクラブ員さんには迷惑かけないでよと念を押され、それはしませんと間髪入れずに答える。

 そりゃそうですよ、高いお金払ってヨガを楽しみに来てくれてるんだから、もちろん仕事はしっかりします。

 綺麗になりたいとか、痩せたいとか、精神的、肉体的安定にもヨガはいいから、情緒不安定な方や生理痛のきつい方なんかも、精神安定、痛み緩和のために通ったりしている。

 その他にもアンチエイジングの為に来るとか、そういう美意識の高い方だって多くいらしてるんだから、望む以上のものを提供したいって思うし、そうできるように毎日頑張ってるつもり。


「今日は朝から晩まで働いてもらうよ」

「もちろんですよ店長。そのつもりで気合入れて来てますから! 働きますよっ」

「だといいけど。ま、頼むわよ。今日1日ハードだと思うからね。期待してるよ」

 期待してるよ。と背中をぽんと叩かれれば、あのメモの言葉が頭に浮かぶ。


 期待してる...か。また言われたなぁ。

< 112 / 261 >

この作品をシェア

pagetop