なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「それでね、マスター、あの大晦日のときのこと覚えてます?」
「大晦日? ああ、もちろん覚えてるよ」
口元にシワが入るその笑い方がいいな。
「えーと...」
なーんにも覚えてないので1から教えてください!
とは、さすがに恥ずかしくて言いにくい。どうしよう、何て言ったらいいんだろう。でも聞きたい。
恐いけど、聞きたい。
「あいつさ、よく分からない奴だけど、ただ真っ直ぐなだけだから、信じていいと思うよ。というより、信じてやってよ」
「え」
「バカがつくくらい正直で、そして不器用で真面目。見た目あんなんだからよく間違えられるけど」
「はぁ」
確かにそういうタイプには見えないよね。失礼な言い方なのは分かってるけど。
「だから、こいつだって思わない限り自分の中身は全く見せない。男にも女にも。あいつのバックグラウンド目的に近づいてくる女がたくさんいるから...」
「バックグラウンド?」
「え? ...まさか夏菜ちゃん、本当に覚えてないとか?」
「なんにも」
「うっわー、きっぱりくるね」
ははは、と脱力したマスターは可笑しそうに笑って、一人で頷いていて、
「ま、えーと、んー、そうだな、もうそれなら思い出さなくていいんじゃない? 時が来れば思い出すよきっと。それまではそんなかんじでいいと思う。それに、そんな重大なことは話してなかったから、忘れたままで安心していいと思う」
「マスター、それってなんか諦めの範疇なんじゃ」
「まさか。そのままでいいってことだよ。余計なことは考えずに。そのままの夏菜ちゃんでいいってこと。でもひとつだけ」
急に真面目な顔になるからこっちも緊張する。
「いずれ分かることなんどけど、あいつには...」
視線が私の後ろへ向けられて、話が途切れ、
その視線を辿って行くとそこには...
萩原さんがいた。知らない女性と一緒に。