なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
『夏菜?』
低い低温。ちょっと焦ってる。久しぶりに聞く声だけど...
ちょ、待って待って待って、待ってって。あんた本気で言ってんのそれ、嘘でしょ? なんの冗談? あはははは...と、笑う女性の声が萩原さんの電話の向こうから聞こえてきた。
いいから黙ってろよお前は! という萩原さんの声もなんだか...なんだか...なんだか...
「...にして...よ...」
『おい...夏菜、待て』
「いい加減にしてください! なんなんですかこれ。さっぱり意味が分からないんですけど、昨日からなんなんですか! 彼女だか奥さんだか知らないけど、そういう人がいるなら変に気を持たせるようなことしないでくださいよ! なんでそんなことするの? こっちは一生懸命思い出そうと思って頑張ってたのに、なんかほんと、バカみたい!」
『いや、だから話は最後まで...』
「最っ低! もう二度と関わらないでください私に! 連絡もしてこないで! もう、出ていきます!」
『そうじゃなく...』
言っててだんだんヒートアップして、あったまにきて、最後まで聞かずに電話を切った。
「荷物まとめて出てってやる!」
すごい屈辱。始まりがあんなんだから私にも非はあるとは思うけど、こんなのってあんまりだ。ひどすぎる。
泣かない!
誰が泣くか!
ぐっと涙をこらえ、鼻をずるっとすすり、袖口でぐしゃっと拭く。
うー。
こうなりゃ部屋に戻って荷物まとめてさよならしてやる!
新しい自分に出会うために何もかも捨ててやる!
いつもならここで私が我慢すれば、何もなかったように元通りに戻るんだけど、だって、いつもならここでもう終わりで、深く聞いたりしないで、そのかわりに蓋をしてきてたから。
それってきっと自分が傷つきたくないがためにしてたことなんだって気付いた。そうすると、どんどん調子に乗られちゃうんだ。
優しさだと思ってたけど、間違ってた。
だからもうそれはやめる!
言わなきゃならないことは、言わなきゃダメなんだ。