なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「もう帰れよ。もうそのへんでいいだろ。用事も終わったんだし」

「はいはーい」

 抱かれてるって温かいし暖かい。私の顔は丁度萩原さんの胸あたりで、スーツの中に腕を入れてぎゅっと抱き締めてみる。

 相変わらず二人は言葉遊びを楽しんでいるけど、ぎゅっとし返してくれて、大きい手は私の頭を撫でる。


「じゃいいわよ、邪魔物は追い返されることにするわよ。本当は帰りたくないんだけどねー。意地悪な兄が追い出そうとするから仕方なくよ」

「帰れ」

「なっちゃん」

 まさかその呼び方で来るとは思わなかったから、咄嗟に顔を上げる。

「...避妊はちゃんとしてよ。順番通りじゃなくたってまったく問題ないんだけど。例えば今日できちゃったとするじゃない? 生まれてきたときに逆算するじゃない? そうするとあたしちょっと複雑な気分になるじゃない? ね。だからよろしく」


 とんでもないことをぺらぺら言って、自分の言いたいことはしっかり言って、秀太郎という名の嵐は行くべき場所へ帰って行った。

 何て人だ。あんなに綺麗なのに男性で、しかも変わった人、いや、性癖で。



「ダメ。もう我慢できない」

「私も」


 貪るようなキスをして、荒々しくお互いに服を剥ぎ取るように脱がせ、脱ぎあう間も唇と舌は離れない。

 ベッドまで行く間に何回かぶつかったけど、笑いながらもキスは続き、

「あっ... っ...」

 ベッドの上に倒れこんで、両腕は頭の上でひとつに押さえつけられて、見つめ合って、それから優しいキスに変わり、首筋から肩、鎖骨、脇、腕へとゆっくりと焦らすように唇が這い回る。

「だめ、もういいから...おねがい」

「大胆だね。そういうの嫌いじゃないけど、でもまだダメ」

 唇と舌は執拗に胸やお腹を隈無く舐め回し、呼吸が荒くなるのを楽しんでからゆるりと下へ移動する。

 
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