なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「その感じだと夏菜は俺の名前すらも覚えてないでしょ?」
はい、完全に私だけが何もかも覚えていないのが決定しました。
この感じからしてきっと私たちは、いや、私は、私の意識は酔っ払った時に勝手に暴走して自己紹介も済ませたらしい。
本当に申し訳ございませんでしたとしか言えない。
腰を深ーく折って90度でお詫びの礼を致しますから、いやむしろおでこを地面につけますから許して下さいって感じだ。
私、本当に最低だな。
「ま、いいや。俺、萩原。夏菜の彼氏。厳密には今朝から」
......それは無かったことにはなりませんでしょうか?
きっとこれが絶句ってやつだ。何も言えない。
口、半開きでバカみたいな顔をしていたんだろうな、萩原さんは私の顎を上に押し上げ、口を閉じさせ、ほっぺたを左右に引っ張って変な顔をさせた。
「おもしろい顔」
「ちょっと! 人の顔で」
手を払って頬を抑えた。
「で? もう荷物取りに行くの? 夕方じゃなかった?」
荷物? 夕方? おっと、そんなことまで話してたんだ。全てを知ってるって思っても間違いじゃないだろうな、この感じだと。
がっくし。肩が地面につきます。顎も地面につきます。手の甲も地面につきます。
溶けてみるから許してください。
「お前さ、酒抜けると性格も変わるのな? いや、だいたいみんなそんなもんだけど、そこまで変わるのも珍しい。ますますおもしろい」
肩を揺らして笑う萩原さんは呆然と立ち尽くす私の横を通り抜け、ドアのカギを開けてくれた。(どうやって開けたんだろうか)