なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
相変わらず雰囲気の良いバーには相変わらずダンディーなマスターがいて、私たちを眺めながらニタニタしている。
マスターとの話を聞いていると、この前の話の続きだけど、などと切り出してるから、萩原さんはここにはふらりとよく現れているようだ。
平日の早い時間ってこともあって人はまばらにしか入っていない。
天井も高く広い空間だからグラスを回したら時に出る氷の音色が綺麗に辺りに響く。
昨日話した通り、パーティーでのことを謝って、そしたら、そんなこと気にしないでいいよ。悪いのは全部萩原だから。と、視線を横にいる萩原さんに向けて、3人でクスクス笑う。
カウンターに置いた私の右手の上には萩原さんの左手が重なっていて、手を繋いでいる状態。
「ああ、夏菜ちゃん、やっとそうなった?」
「はい」
「じゃぁ次ここに来たときは結婚の報告か?」
「マスターなんてことを。考えたこともないですよ」
いきなり発言にびっくりしちゃって、思わず手を顔に...と思ったら、ギュッと右手をおさえられて動かない。
「考えたことないんだ?」
「...えっと、だってその」
「じゃあ、考えてみたら?」
!!!!!
「ほほほほ、本気ですかっ」
「俺はいつでも本気。前にもそう言ったろ?」
「聞きましたけど、でも」
「でもはいらない。お前けっこうその言葉使ってるよ」
「...は...い」
「そうそう、それでいい。俺に対しては『はい』だけでいい」
満足気に笑ってグラスに口をつけるその横顔も素敵で、本当に私でいいの? 期待しちゃうよって思ってずっと見続けてたら、
「そんな顔しなくても、俺はお前だけだから安心しな」
こくこく頷いて、『はい』って小さく答えた。