なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 嫌な予感ほどよく当たるもので、珍しく酔っ払って帰ってきた萩原さんは、呂律が回らないほどお酒を飲んでいた。

 出会ってから今までにこんな姿になったのを見たことがなかったので正直戸惑ったけど、仕事関係でメンタル面が落ちているのかもしれないって思った。


「萩原さん、ちょ、どうしたんですか。大丈夫ですか」

 本人は、大丈夫だと言ってるつもりなんだろうけど、実際なんて言ってるか聞き取れない。

 そして、当たり前のように私のベッドに倒れ込んで名前を呼ぶから側に寄れば、後ろから抱き抱えられて首筋に、うなじにキスをしてくる。

 そのうちに力が抜けてきて寝息が聞こえ始めた。

 まったく、どうしてこんなになるまで飲んだんだろう。

 完全に寝てしまったことを確認して、そっと離れてスーツを脱がす。

 シワになると困るだろうからハンガーにかけておこうと胸に抱えて部屋を出ようとした時、ふわりと覚えのある匂いが鼻についた。

 電流が流れたような痛みが胸に走った。


 だってこの匂いって...


 車の中で見つけたあのアトマイザーの中の香水と同じ匂い。

 誰かは分からないけど、あの香水の持ち主と会ってお酒を飲んでいたに違いない。

 もし秀太郎さんと一緒だったらきっと彼も一緒にここに来るだろう。兄弟なんだから、ここまで酔った兄を一人で帰すはずはないと思う。


 誰なんだろう。

 香水の匂いがシャツにつくほどの距離で一緒にいたってことだ。

 どう考えても男性じゃないことは確かだと思う。

 
< 157 / 261 >

この作品をシェア

pagetop