なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 何も考えられないまま仕事を淡々とこなし、家についたのはやはり夜。

 萩原さんが帰ってきた様子はない。

 家に電話を忘れてしまったのに気付いたのはお昼休みのことで、電話が手元にないっていうことがこんなに不安な気持ちになるってことを初めて知った。

 リビングのテーブルの上に置きっぱなしの電話はお知らせランプを点滅させている。いったいいつからそうやって点滅していたんだか分からないけど、それを見てなぜだか悲しくなった。

 体も精神的にもくたくたなんだけど、やはり気になる。

 




 メール、無し。

 知らない番号から着信が3件入っていた。

 一番新しい着信はたった10分前のもの。誰だか分からないけど、1日に数回も連絡をしてくるってことは何か用事があるはず。

 かけ直しながらソファーに腰をおちつけ、背もたれに深く背中を預けた。





『夏菜さん?』

 聞き覚えのある声に針で体を刺されたような痛みが走る。

「...は...い」

『野々宮です』

 気持ちは更に落ち込んだ。やっぱりそうだった。野々宮さんの声だ。

「なんで私の電話番号知ってるんですか」

『萩原の電話を見たから』

 どうして。なんでそんなことしてるの?

『んー、そうね、なんて言ったらいいかしら...私たち昨夜から一緒にいたの。彼ちょっと飲みすぎちゃって、うちに泊めたわけ。あなたに電話をしたのは話があったからなのよ』

「......話...ですか」

『お会いして話しましょう。電話は好きじゃないから』

「...萩原さん...は、そこに...いるんですか」

『いるわよ。シャワー浴びてる』




 もうどうにでもなれって思った。雷に射たれたように、頭のてっぺんから電流が流れ込んだ気分。

 信じてたのに、裏切られた感じ。

 今から会いましょうとまた一方的に言われ、従うしかない私がいて、でも、行くしかない。

 野々宮さんから何かを聞くのは正直腹立たしいけれど、何があったのかを聞くまでは、萩原さんのことを信じていようってもう一回考え直して、シャワーを浴びて服に着替えた。

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