なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「ほらさっさと止まんなさいよ! クソタクシーが!」


 下のコンビニに買い物に行く途中で聞こえてきた罵声に足を止めることになる。

 車道半分あたりにまで出て、大股開きで立っている女性がひとり。

 タクシーはと言えば、全く止まらずに、更にはスピードを上げて走り去る有り様で。


 道のど真ん中で叫んでるこの女性、誰だか知ってる気がする。


 でもなんでここにいるんだろう。


 後ろから恐る恐る近づいてみるとその予感は的中で、野次馬が集まりはじめてきた。


 止めないと。止めないとヤバイ。


 通りすぎるタクシーに吠え続けている女性に近づいて恐る恐る腕をポンと叩いた。


「あ?」


 振り向き様に低くドスの聞いた声。


「あらやだ、夏菜ちゃんじゃない」

「やっぱり秀太郎さ...」

 素早く口をおさえられて、耳元で『その名前は今じゃない』と囁かれた。

「...だったらなんて」

「秀子」

「...ひでこ?」

 また古風な...

「なに...やってんですか...ひでこ...さん?」


 ぜんぜんしっくりこない。てか、ぜんぜん似合わないし。

 とにかく、ここじゃなんだからと、本当はダメなんだけどスタジオに引っ張りこんだ。

 暴れてたのを見られてたし、スタジオの近所の目もあるし。


「本当は営業時間外だからあれなんだけど、でもちょっとなら」

「は? あんた何言ってんのよ。わたしたちここの関係者なんだけど」


 ああ、そういえば萩原さんもそんなこと言ってたなあ。

 思い出したら気分が重くなってきた。



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