なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「最低だなお前」
?????
私が最低ですと? 私が最低ですとね?????
いやほんとに開いた口がふさがらないってこういうことだ。
なんの言葉も出ない。
言ってやろうと思っていたことがたっくさんあったんだけど、言えない。言いたい言葉はフリーズして出てこない。
ここに来る間にいろいろ考えた。
Aプラン、Bプラン、Cプランまで考え、何を言われても対抗できるようにしたつもりだ。
でも、そんなこと全てが一瞬にしてぱっと飛んだ。
てか、私は本当に最低だ。ほんとにバカなんだなって気付いた。
だって、3年も一緒にいてこの男の正体が見破れなかったんだから。
こんなどうしようもない男だったってこと、ぜんぜん気付かなかったんだから。ふつうこんなことしないしできない。
一体何を考えているんだろうこいつは。
今まで抱かれていた自分を思うと、気持ち悪い。
手を繋いだり、腕を組んだり、キスしたり、ラブラブでいちゃいちゃしていた自分に悪寒すら感じる。
今までの日々が...まじで鳥肌もので、これこそ本当に無かったことにしたい!
「真さん、彼女...いないんじゃなかったんですか?」
弱々しそうに言った言葉は小さすぎて揺れてて、やっと耳に届くようなか細い声だ。
「...もう...別れてるって...彼女さんですよね?」
目に涙をいっぱい溜めて震えるこの女性は、昨日までの私の定位置にいるわけで、そんな女性を見ても何故か何も思わない自分もいたし、でもやっぱりイラッとしている自分がいたのも事実。
言ってみりゃ小動物系だ。リスだよリス。もしくはバンビ。ぷるぷる震えているからかもしれないけど、そう見える。
最後に全部バラしてってやろう。
私の頭の中の真スイッチがカチッと音を立てて『off』になった瞬間だ。
冷めるときのきっかけなんてほんのささいなことだ。1秒前まで愛し合っていても、『冷めるスイッチ』に少しでも触れたらもうおしまいだ。
一瞬で真逆の世界へ行ってしまう。