なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「最低だなお前」


 ?????


 私が最低ですと? 私が最低ですとね?????


 いやほんとに開いた口がふさがらないってこういうことだ。


 なんの言葉も出ない。

 言ってやろうと思っていたことがたっくさんあったんだけど、言えない。言いたい言葉はフリーズして出てこない。

 ここに来る間にいろいろ考えた。

 Aプラン、Bプラン、Cプランまで考え、何を言われても対抗できるようにしたつもりだ。

 でも、そんなこと全てが一瞬にしてぱっと飛んだ。

 てか、私は本当に最低だ。ほんとにバカなんだなって気付いた。

 だって、3年も一緒にいてこの男の正体が見破れなかったんだから。

 こんなどうしようもない男だったってこと、ぜんぜん気付かなかったんだから。ふつうこんなことしないしできない。

 一体何を考えているんだろうこいつは。

 今まで抱かれていた自分を思うと、気持ち悪い。
 手を繋いだり、腕を組んだり、キスしたり、ラブラブでいちゃいちゃしていた自分に悪寒すら感じる。

 今までの日々が...まじで鳥肌もので、これこそ本当に無かったことにしたい!


「真さん、彼女...いないんじゃなかったんですか?」

 弱々しそうに言った言葉は小さすぎて揺れてて、やっと耳に届くようなか細い声だ。

「...もう...別れてるって...彼女さんですよね?」

 目に涙をいっぱい溜めて震えるこの女性は、昨日までの私の定位置にいるわけで、そんな女性を見ても何故か何も思わない自分もいたし、でもやっぱりイラッとしている自分がいたのも事実。

 言ってみりゃ小動物系だ。リスだよリス。もしくはバンビ。ぷるぷる震えているからかもしれないけど、そう見える。


 最後に全部バラしてってやろう。


 私の頭の中の真スイッチがカチッと音を立てて『off』になった瞬間だ。


 冷めるときのきっかけなんてほんのささいなことだ。1秒前まで愛し合っていても、『冷めるスイッチ』に少しでも触れたらもうおしまいだ。

 一瞬で真逆の世界へ行ってしまう。





< 21 / 261 >

この作品をシェア

pagetop