なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「ふーん...本気なんだ。じゃさっさと送っちゃって」
打ちたくもない言葉を一生懸命打ったのに、最終的にこんな簡単にあしらわれると、悲しい。
「本当に返してくれるんですね?」
「約束は守る。萩原を私に返す代わりに、あなたの望むその2つのものを返してあげる」
唾を飲んだ。メール画面を見たまま、送信ボタンに指を伸ばす。
これを押したらもう後戻りできない。
完全に終わる。終わっちゃう。
でも、これでいいんだよね?
私が我慢すれば全て上手くいくんだから。
送信直後、ちょっと電話貸してちょうだいと携帯を奪われ操作される。
ぽんと返された電話が手の中に戻ったけど、もうなんでもいいやってなっちゃって、
「...それじゃ、帰りま...す」
「待ちなさいよ」
席を立とうとしたところで引き留められ、また座る。野々宮さんは笑顔で電話を操作して耳に当てた。
「.........私。そう、あの話は白紙にして、いいわね。そうよ、あのスタジオはそのままにしておいて」
今のって。
「約束は守ると言ったでしょう? 今の電話でイーブンよ」
私の目の前でどこかに連絡をして話をしていた。
早い。仕事も早いんだろうなとか意味不明なことを考えちゃって、
「どこに帰るわけ? 帰るところなんかないでしょう」
ないですけど、スタジオがありますから。
「ここにしばらくいるといいわ」
ぽんと渡された鍵はどこかのホテルのカードキーで、いくつか部屋を借りてるうちのひとつだから気兼ねなく使って。
野々宮さんの世話にはなりたくなかったけれど、今は誰にも会いたくないから...
「そのかわり、私からの電話には出なさい」
小さく頷くと、のそりと席を立った。