なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

【夏菜】


 信じることって難しくて、信じられなくなることを実際に目にしたり耳にしたりすると、今まで信じると決めていた気持ちがあっという間に崩れ落ちる。

 萩原さんが野々宮さんと腕を組んで歩いていたこと、野々宮さんの滞在するホテルに入ってったこと、ショックだったけど、なんでもないという萩原さんの言葉を信じた。だって、それ以外にできることがないでしょ?

 でも、あれだけはダメだ。思い出すと更に落ち込むけど、もうどうにもならない。

 全てのものから開放されたい。誰もいないところ、誰も知らないところへ行きたい。忘れてしまいたい、なにもかも。


「で、ここに来たの?」

「他にどこも思い付かなくて」

「それはいいけど、どうするの?」

「...分かりません」

「秀太郎でも呼ぶ?」

 マスターのことばに首をただ横にふるふると振った。ホットココアを飲みながら、ぼけーっとマスターの顔を眺めていた。

「...マスター、もうだめかも。てか既にダメになってるんだけど、私本当に自分で自分がむかついてくる」

 頬杖をついて最大級に長いため息をついた。

 頬杖をついたまま、左右の指を頬骨の上に当ててタッピングした。ここはコラーゲン再生を促すところでもあるし、女性ホルモンを活発にさせるところとも言われている。ね、こんな時にまで仕事のことが頭に入ってくるなんて、私はきっと仕事だけして生きていればいいんだ。恋愛なんてしないほうがうまくいくのかもしれない。



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