なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 私はなんてことを口走ったんだ。

 とんでもないことを自ら言ってた。

 酒の席とはいえ、初めて会った人にプロポーズするなんて、なんて、なんて、なんてバカなの。

 そのあとトイレ行って、それで真が入ってきてテンパったんだ。


「お嬢ちゃんは本当に面白い子だね。夏七と一緒になったら大変だと思うけど、だったらほら、そこのうちの長男と一緒になった方が幸せだと思うよ」

 顎で示されたのはマスターで。

 親父何言ってんだよ。と、つっこむ萩原さんに、お前がもうちょっとしっかりしてたらこのお嬢ちゃんが泣くことはなかったんだよ。お前は物事を深く考えないからこうなる。と、返して、いつの間にか野々宮さんは秀太郎さんの隣に座っていて、ネイルの話で盛り上がっていて、自分がひっかきまわしたことの重大さなんて全然分かっていない。

 目の前のおじさまが私に本当に申し訳ないと野々宮さんの変わりに謝っていて、あいつは止められないんだよ、気が済むまで突き進んで行くんだけど、ここまで人に迷惑をかけたことはなかったと弁明も忘れない。

 あいつがそうなるのは専ら自分の絵についてのことで、自分に対してなんだけどね、でもそうだね、君のことがどこかでひっかかったんだと思うよ。どこの琴線に触れたのかはわからないけど。でももうあいつにはいっさい関わらせないから安心してくださいと言ってくれて、マスターは相変わらず楽しそうに笑ってる。


「お前さ、さっき親父に言ってたこと全部聞こえてたんだけど」

「さっきのって、まさかおじさまに話したこと全てですか?」

 私がどれだけ好きかとか、なんてことをしたんだって思ってるってこととか、全部全部聞かれていた。

 バーに入ろうとしたら、私が大声で何か言ってるのが聞こえて、入るのを躊躇したそうだ。

 外にいる二人に気付いたおじさまが私の気持ちを引き出して、そう、さっきのことに繋がる。

「恥ずかしすぎて死にそう」

「いいわよ死んでも」

 野々宮さんの悪あがきはまだ終わらなくて、もう少しだったのに、ここにおじさまがいたから計画が全部狂ったと怒りの矛先はおじさまに向けられた。

 けっこういい歳なのに、こんなにわがままというか自分の本能で動く人も初めてみて、正直、芸術家をうたう人は本当に変わっているのかもしれないと、野々宮さんの顔を見てそう思った。


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