なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「なります。なる! 萩原夏菜になりたい!」
「よかった」
子供のように笑うその顔が好き。
「ひとつ確認したいことがあります」
「なんなりと」
野々宮さんと、ヤッた? と、無駄な言葉を一切省いて無骨なことを言えば呆れた顔をして...
だからあいつは姉貴だよって言ってきたから、腹違いのじゃんと噛みつけば、ありえない、そんなことは絶対に無いと言い切った。
喘ぎ声とベッドギシギシって聞こえたし...と被せたら...
「まじであいつ悪趣味だな。悪趣味なのは絵だけかと思ったんだけど、性格も十分悪趣味だったか」
個展の招待状をみせてもらってびっくりした。だってそこには一面真っ黒で、真っ黒の真ん中に真っ赤な塊がひとつ描かれていて、その中に人のような物が見える(ような気がする)
フランシスベーコンを思わせるような描き方だ。
野々宮さんはニューヨークを拠点に活動する画家。その(気持ちの悪い)絵が一部のマニアに大ウケで、海を渡った日本にもコアなファンがいる。
「あいつは思い込むとそれに突っ走る節があるから」
子供の時にあいつの怖い一面を見た。何回かね。全部が秀太郎がらみだけど。あんなんだから学年上がるたびにいじめられたりしてたんだよ。そのたびにあいつはいじめたやつらに倍返し。そんな状況を子供ながらに見せつけられたら逆らえない。
「昔からすごい人なんですね」
「悪いやつじゃないんだけど、きっとお前に持ってかれると思ったのが引き金じゃないかと思う」
「何ですかそれ」
「母親の心理なんじゃないか。母親じゃないんだけどな。だから、本当に悪かったよ。強くでられなくて」
そうか、萩原さんも悩んでたんだ。どうしていいかわからなかったんだ。どっちの味方になるとかじゃなく、どっちの味方でもいたかったんだね。
「でも仕事の件とかそれこそタイミング良すぎじゃないですか?」
「秀太郎が親父になんとかしてくれと連絡したみたいだな。親父も忙しい人だからあまり家にいないことが多かったから、野々宮のことを隅々までは知らないんだろうな。まぁ、野々宮のことに関しては親父が全面的に面倒みてるってのもあるから秀太郎から連絡を受けてすぐにこっちにかけつけたらしい。で、兄貴に話を聞いているところにお前が入ってきたそうだ」
だからあそこにおじさまがいたんだ。
しかも、店の外には『CLOSED』って看板までかけてあったようで、そんなものに見向きもしなかった私はなに食わぬ顔でそこへ入ってったってわけだ。
家族一同あそこに集まって、これから京子さんの個展に足を運ぶことになっていたそうだ。