なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「ん。来ないなら俺が行く」
ソファーから起き上がろうとする萩原さんをちょっと待って! と手を思い切り開いて『止まって!』とやった。
「待ってください!」
来なくていいですから。
「...なんで」
「だって...」
「何もしないよ。何かされると思ってるでしょ」
こくこくと頷く私をしばらく黙って見ていると、ふっと鼻で笑って肩を揺らし始めた。
「ほんと面白いなお前。あれを思い出せないなんて、一体どんだけ飲んだんだろうな」
「...もうそれは言わないで下さいよ。ずーっと思ってることなんですけど、穴がそこらへんにあったら入りたいくらい恥ずかしくて仕方ないんですから」
どうにもこうにも思い出せない私は、その話をされると心から恥ずかしくて仕方がない。
こんなに何もかも忘れたことは今までに無かった。
何か思い出すためのいい方法はないだろうか。
例えばセラピーに行くとかはどうだろう? 退行催眠なんてどう?
いや、待って。そもそもその医者自体を知らないか...
「そのうち思い出させてやるよ」
萩原さんはいつものように『そのうち思い出させてやるよ』と言って、ソファーに体を戻し「少し寝る」と言いながら横になった。