狡猾な王子様
「秋が言ってたよ?」


「なっ……!」


バッと振り返ると、秋ちゃんは呑気に大きな欠伸をしていた。


秋ちゃんのバカッ!!


恨めしげに睨み付けた秋ちゃんには、やっぱりデリカシーが必要だと思う。


もっとも、そんな風に思われているなんて知らない本人は、また欠伸をしているのだけど……。


「秋は、その人のことがとにかく気に入らないみたいだけど、今のふうちゃん見てるときっと悪い人じゃないんだろうなーって思うんだよね」


南ちゃんのキラキラとした表情に弱い私は、その可愛らしい笑顔から逃げるように視線を逸らす。


だけど、彼女はそんな私を逃がしてくれる気はないらしく、顔をひょっこりと覗き込んで来た。


「その顔は図星みたいだね?」


「……どうしてお見通しなの?」


「女の勘だよ。それに、ふうちゃんってすごくわかりやすいし」


クスクスと笑う南ちゃんを見て、一番恨むべきは自分自身の単純さなのかもしれない、と深いため息をついた。

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