狡猾な王子様
“みちる”と呼ばれた女性は、椅子から立ち上がろうとしていなかったけど……。
「みちる」
もう一度名前を呼ばれると、唇を噛み締めながら腰を上げた。
「英二……」
英二さんの名前を紡いだ声は鈴の音のように綺麗で、心臓がドキリと跳ね上がる。
ゆっくりと顔を上げたみちるさんは、やっぱり泣いていたようで瞳が少しだけ赤かった。
「ねぇ……。お願いだから、ちゃんと考えてから返事を──」
「何度も言ってるけど、俺は帰るつもりはないよ。家元は兄貴が継ぐことが決まっているんだし、途中で茶道を辞めた俺は必要ないはずだ。だから、今度の茶会にも出るつもりはない」
みちるさんの言葉を遮るようにきっぱりと言い放った英二さんは、彼女を突き放すように顔を背けてしまった。
「わかったら、早く帰れ」
敢えて視線を合わせないようにしているのか、それともただ合わせる気がないだけなのか。
どちらにしても、私の瞳に映るその横顔は傷付いているように見えた。
「みちる」
もう一度名前を呼ばれると、唇を噛み締めながら腰を上げた。
「英二……」
英二さんの名前を紡いだ声は鈴の音のように綺麗で、心臓がドキリと跳ね上がる。
ゆっくりと顔を上げたみちるさんは、やっぱり泣いていたようで瞳が少しだけ赤かった。
「ねぇ……。お願いだから、ちゃんと考えてから返事を──」
「何度も言ってるけど、俺は帰るつもりはないよ。家元は兄貴が継ぐことが決まっているんだし、途中で茶道を辞めた俺は必要ないはずだ。だから、今度の茶会にも出るつもりはない」
みちるさんの言葉を遮るようにきっぱりと言い放った英二さんは、彼女を突き放すように顔を背けてしまった。
「わかったら、早く帰れ」
敢えて視線を合わせないようにしているのか、それともただ合わせる気がないだけなのか。
どちらにしても、私の瞳に映るその横顔は傷付いているように見えた。