狡猾な王子様
みちるさんは清楚な雰囲気に似合わず、眉をグッと寄せた。


ただ、その表情から見えるのは怒りのような厳しい感情ではなくて、どちらかと言うと悲しみのそれに近いように思える。


「ねぇ、英二……。本当にもう──」


「何度訊かれても、俺は同じ答えしか返せない。だから……」


さっきと同じようにみちるさんの話を遮った英二さんは、綺麗な表情を僅かに歪めたあとでフッとため息をついた。


「同じ話しか持って来ないなら、もうここには来るな」


冷たく、厳しい。


そんな口調で紡がれたのは、それに似つかわしい言葉だった。


このふたりの関係も、どうしてこんな話をしているのかも、よくわからない。


なんとなくわかったのは、とても深刻な内容が交わされているということだけ。


同時に感じたのは、不安が呼び起こす“ざわめき”。


だって……。


ふたりはお互いに対してなにか特別なものを抱えているのではないか、と思えるような雰囲気が漂っていたから……。

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