狡猾な王子様
どんな言葉を紡ぐべきなのか必死に考えてみても、温かい家庭で育って来た私にはちっとも思い浮かばない。


両親も祖父母も仲がよくて、三人の兄たちとは喧嘩をすることもほとんどないまま育って来た。


兄たちのお嫁さんと恋人もとても優しく、彼女たちに不快感を抱いた記憶だってない。


そんな私が、家族と疎遠になってしまった英二さんになにを言えるのだろう。


どんな言葉を口にしたとしても、きっと彼にとっては気障(きざわ)りなだけ。


「冬実ちゃんの家族は仲がいいみたいだから、こんなの想像できないだろうね」


程なくして、私の気持ちを見透かすように、英二さんがまた嘲るような笑みを零した。


自分でも納得できることを言われただけなのに、とても悲しくて胸の奥がズキリと痛む。


それを表情に出してしまうと、英二さんが微苦笑を浮かべた。


「……ごめん、八つ当たりだね」


同時に零された小さなため息が、店内の静けさを誇張するように響いた。

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