狡猾な王子様
「俺は勘当同然で実家を出ているし、戻る気はないんだけどね。みちるは度々ここに来て、俺に実家に戻るように言うんだよ」


“勘当”という、自分には縁のないように思える言葉。


その意味はもちろんわかるけど、自分の知っている人が実際に経験していることだと思うと、悲しくなる。


それは、私が賑やかな家庭で育って来たからなのか、それとも恵まれた環境にいるからなのか。


きっと、その両方がこんな風に感じさせるのだろう。


「俺は、厳しい実家にいるのも、自分の夢を捨てるのも嫌だった。だから、勘当されるのをわかっていても、大学に進学せずに家を出ることを決めたんだ」


ゆっくりと顔を上げると、英二さんはやっぱりなにげない話をするような顔をしていて、その表情から彼の感情は読み取れない。


だけど……。


「俺は、自由を手に入れた。その代償として、実家を捨てることになっただけだよ」


そう言った英二さんは、眉をほんの微かに寄せて寂しげな顔をしていた。



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