狡猾な王子様
「……えっと、どうしたの?」


私を見ながら尋ねて来た英二さんは、眉を寄せて困惑の笑みを浮かべている。


営業時間外に突然やって来た、予期せぬ訪問者。


それも情事の邪魔をされたとなれば、とても気まずそうな顔になるのは当然のことだろう。


ただ、私は気まずさなんかよりもショックの方が何倍も大きくて、なんて答えるべきなのかがわからない。


「邪魔されちゃったし、今日は帰るわ」


そんな私に苛立ちを見せたのは佐武さんで、彼女は私に鋭い視線を寄越しながら淡々と言葉を紡いだ。


「悪い……」


「店の方にいるわ。タクシーが来たら、勝手に帰るから」


「ちょっとだけ待ってて。送るから」


「そっちは時間が掛かりそうだし、別にいいわよ」


刺々しい声音が気まずさを色濃くし、私が邪魔者だということを間接的に突き付けられる。


佐武さんがため息混じりに立ち上がると、英二さんは申し訳さそうに笑った。


「未散」


その直後、心臓が大きく跳ね上がった。

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