狡猾な王子様
ショックで心臓が止まるって、本当なんだと思った。


驚きのあまり硬直した私の目の前には、まるで映画のワンシーンのようにソファーで情熱的なキスを交わす男女。


そのふたりが誰なのかはすぐにわかって、その瞬間には心臓が止まったような気がした。


「……え?冬実ちゃん……?」


目を小さく見開いた英二さんに呼ばれ、すぐにハッとしたけど……。


視界に入って来たふたりの姿が、再び私から言葉を奪う。


英二さんの乱れ掛けた服装は正に情事の最中だったことを語り、その事実を目の当たりにして唇が震えた。


「……また、あなたに邪魔されたわね」


ため息をついた佐武さんは、眉を寄せていた。


謝罪を紡ごうとした唇は、相変わらず小刻みに震えているだけ。


佐武さんはすっかり気分を削がれたと言わんばかりに下着を整えて、タイトなワンピースのサイドに付いているファスナーを上げた。


彼女の赤い下着がその中に消えていく様子を、私は呆然と見つめることしかできなかった。

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