狡猾な王子様
朝食の片付けをしながらお母さんと交わす会話に、今年ももう終わってしまうのだとしみじみ感じる。


「毎年思うことだけど、一年って本当に早いわよね」


「うん。でも、なんだか今年が今までで一番早く感じたかも」


「歳を取る度に早く感じるものなのよ」


「やだなぁ……」


振り返ってみれば色々なことがあったけど、記憶に深く刻まれているのは英二さんとのことばかり。


相変わらず褪せることのない恋情は私を苦しめ、そして淡い幸せを運んで来る。


最近では諦める努力をしようと考えることも増えたものの、英二さんの笑顔にときめく心がやっぱりそれを拒んでいて……。


モヤモヤとした感情や苦しみに息が詰まりそうになりながらも、彼に会えることを喜んでしまう私がいた。


恋は厄介なものだなんて知っているつもりだったけど、それを人生で一番痛感しているのは現在(いま)なんじゃないかと思う。


私はこの歳になるまで、本当の意味でそれをわかっていなかったのかもしれない。

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