狡猾な王子様
心臓がバクバクと騒ぎ始める。
足が震えかけていることに気づいたけど、一刻も早くこの場から離れるために駐車場に向かって歩き出した。
だけど……。
「こんにちは」
あと少しで車に辿り着くというところで、後ろから声を掛けられた。
「……っ!こ、こんにちは……」
恐る恐る振り返った私の視界に入ってきたのは、黒いファーコートに身を包んでいる女性。
ロングコートの上からでもスタイルの良さがわかるその人は佐武さんで、店内に向かっているはずだった彼女が私の傍にいることに戸惑い、とても嫌な予感がした。
「配達に来たんでしょう?いつもご苦労様」
そう微笑まれたはずなのに、言葉に棘があったような気がするのは勘違いだろうか。
気のせいだと思えないのは、佐武さんの瞳が笑っていないことがわかるから。
そして、木漏れ日亭のドアまでの最短ルートを歩いていたはずの彼女がわざわざその道から逸れるように私のもとへ来たことも、充分な理由になるような気がした。
足が震えかけていることに気づいたけど、一刻も早くこの場から離れるために駐車場に向かって歩き出した。
だけど……。
「こんにちは」
あと少しで車に辿り着くというところで、後ろから声を掛けられた。
「……っ!こ、こんにちは……」
恐る恐る振り返った私の視界に入ってきたのは、黒いファーコートに身を包んでいる女性。
ロングコートの上からでもスタイルの良さがわかるその人は佐武さんで、店内に向かっているはずだった彼女が私の傍にいることに戸惑い、とても嫌な予感がした。
「配達に来たんでしょう?いつもご苦労様」
そう微笑まれたはずなのに、言葉に棘があったような気がするのは勘違いだろうか。
気のせいだと思えないのは、佐武さんの瞳が笑っていないことがわかるから。
そして、木漏れ日亭のドアまでの最短ルートを歩いていたはずの彼女がわざわざその道から逸れるように私のもとへ来たことも、充分な理由になるような気がした。