狡猾な王子様
「前よりももっと、好きになってるんだね」


ゆっくりと紡がれた声音は優しくて、まるで私の気持ちを汲み取るみたいだった。


そんな南ちゃんには素直になれるような気がして、眉を寄せて微笑を浮かべた。


声を出すだけの勇気はなくて、相変わらず自分の気持ちすら言葉にできない弱さは嫌だったけど、彼女の瞳を見つめたあとで首をそっと縦に振る。


その肯定の仕草は、とても小さなものだった。


声を出せば泣いてしまいそうな気がしたのは、自分が思っているよりもずっとこの恋情が大きくなっていたからなのかもしれない。


最初から報われないとわかっていて、告白した直後に振られていて、あくまで仕事上の付き合いだと線引きをされているのに……。


英二さんの言葉ひとつで舞い上がって、時にはダイエットが成功したらなにかが変わるかもしれないなんて淡い夢を見て……。


本当にちゃんと諦めるつもりだったのに、いつからか彼の抱えているものを知りたいと思い始め、その心に踏み込む方法を探している私がいた。

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