狡猾な王子様
「それに、荷物を運ぶのを手伝ってくれたり、歩くペースを合わせてくれたり……出会った頃からちゃんと女の子扱いしてくれてた。私、身内以外にそんな風にして貰うことってほとんどなかったから、仕事上の関係だからだってわかってたけど、本当に嬉しかったの」


木漏れ日亭に来る女性たちとは掛け離れた冴えない人間なのに、緊張のせいで時には話し掛けられても頷くことしかできなかったのに……。


「こんな私でも、例え仕事だったとしても、ちゃんと女の子扱いしてくれる男性(ひと)がいるんだって……。だから、英二さんに会うと、いつも心が温かくなった」


英二さんは、いつだって私をひとりの女性として扱ってくれた。


誰にでも優しい人だということも、女性の扱いに慣れていることも、その頃からわかっていた。


それでも、慣れるまでに時間が必要だった私のペースに合わせるように少しずつ掛ける言葉を増やし、ちゃんと向き合ってくれた。


英二さんが与えてくれるその優しさのひとつひとつが、とても嬉しかったのだ。

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