狡猾な王子様
「配達、変わってやろうか?」


夜勤明けの秋ちゃんは、いつもように午前中いっぱい寝ていて、午後から畑仕事を手伝っていた。


今日の配達は珍しく木漏れ日亭だけでそのことは秋ちゃんも知っているからこそ、そんな提案をしてくれたのだろう。


その時点で、私のため息の原因は英二さんに関係していることがばれているのだろうけど、敢えて触れずに「大丈夫だよ」と笑った。


話せる気はしなかったけど今日こそは彼に話さなければいけないという気持ちがあったし、それ以外にも今日はどうしても木漏れ日亭に行きたい理由があった。


「今日は、木漏れ日亭だけだから」


「それが問題なんだろ」


ボソッと落とされた言葉にはなにも言わず、「いってきます」と微笑んで車に乗った。


窓越しに私を見ている秋ちゃんは不服そうだったけど、窓を開けるとため息混じりに「気をつけて行けよ」と言った。


エンジンをかけながら頷き、秋ちゃんが一歩下がって車から離れたのを確認したあとでアクセルをゆっくりと踏んだ。

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