狡猾な王子様
「英二さん、ご実家に帰ってみませんか?」


「……え?」


「きっと、もうずっと帰ってないんですよね?だったら、一度だけでも帰って、家族と話し合ってみる方がいいと思うんです」


ドキドキと騒ぐ緊張は、赤の他人が踏み込んではいけない領域を超えている自覚があるから。


家族のことなんて、たいして親しくもないのに口出しをするべきではない。


だけど、今の英二さんを見ていると、ちゃんと家族と会うべきだと思う。


みちるさんのことに触れた時点で、彼にとっては気障りだというのは重々わかっているから、どうせ疎ましがられるのならもっと踏み込んでしまおう。


そう考えて意見した私に、英二さんはとても綺麗な笑みを浮かべた。


それは、いつもの笑顔とは違う、高くて分厚い壁をあらわにするような冷たいものだった。


「どうして、冬実ちゃんがそんなこと言うの?君には関係のないことだよ」


氷のような声色に身が竦みそうになって、好意的ではない彼の表情を前にして無意識に拳を握っていた。

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