狡猾な王子様
「私は英二さんを好きになってよかった、って思うんです」


実らないとわかっていてもそれを口にしたことで胸の奥がキュッと苦しくなったけど、英二さんことを好きになってよかったと心から思えている。


だから、例えちっぽけな強がりだったとしても、前を向けている私は悲しみを感じる必要なんてない。


「そう思えるようになるまでに時間は掛かったし、周りに心配かけたりもしたけど、英二さんを好きになったおかげで私は少しだけ変われたんです」


伝えたいことをすべて口にできたことに安堵したように息を吐くと、程なくしてため息をついた佐武さんがようやく左半身だけで振り返った。


「……わざわざそんなことを言いにきたの?」


「はい」


彼女の顔は明らかに呆れていて、大きく頷きながらも先ほどよりも胸を張ることができなくなった。


「最後くらい、ちゃんと話しておきたくて」


佐武さんに投げた言葉は我ながら自分勝手な言い分だと思ったけど、程なくしてもう一度ため息を零した彼女が苦笑を浮かべた。

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