狡猾な王子様
「変わった人ね。……私なら、わざわざ追いかけないわよ」


自嘲混じりに聞こえたのは気のせいではなかったと思うけど、佐武さんの声はいつものように少しだけ冷たかったから、気づかない振りをする。


「私、あなたみたいに俯いてばかりの人は嫌いなの。外見を磨く努力をしないところも、おどおどしてるところも、イライラさせられるから」


それなのに、彼女は相変わらずとも言える容赦のない言葉を口にし始めたから、さすがに心にグサグサと刺さったけど……。


「正直、あなたのことは目障りくらいに思ってた」


ここまではっきりと嫌悪感を見せられると、いっそ清々しくも思えてくる。


もちろん心が折れそうにはなっているけど、この感じも最後だと思えば耐えられそうだった。


「でも、今のあなたのことは、そんなに目障りでもないわ」


ところが、不意に佐武さんの声音が和らぎ、空耳かと思うような台詞が耳に届いた。


「え?」


恐らく褒め言葉だとは思うけど、どう受け取ればいいのかわからなかった。

< 334 / 419 >

この作品をシェア

pagetop