狡猾な王子様
「先週、実家に行ったんだ」


「本当ですか……?」


心苦しくなっていたことを忘れそうになるほど驚いて、思わず念を押すように返してしまうと、ひと呼吸置いて英二さんが小さく頷いた。


「門前払いされるのを覚悟で行ったのに、両親や兄貴には歓迎されて、祖母には涙ぐまれたよ」


困惑の色を浮かべる彼にとって、予想外のことだったのだろう。


この間の英二さんの話し振りでは、彼のおばあさんは厳格な人のようだし、実際に対面した時に私自身もそう感じた。


それでも英二さんの前で涙ぐんだということは、彼に会うつもりだったと思ったのは間違っていなかったのだと確信して、安堵とともに喜びが芽生えた。


「冬実ちゃんに踏み込まれた時と同じくらい面喰らったけど、初めてちゃんと話を聞いてもらえたし、祖母なりに向き合おうとしてくれてたと思う」


どこか照れ臭そうな顔を見ながら、鼻の奥がツンと痛む。


きっとまだ問題はあるのだろうけど、英二さんと彼の家族の関係が変わり始めたことが本当に嬉しかった。

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