狡猾な王子様
「ただ、まだ納得はできないみたいだった。次男とは言え、一応は宗家だしね。兄貴いわく、祖母と両親は今でも俺に茶道をやってほしいみたいなんだけど、最後までそれを口に出されることはなかったよ」


不意に眉を下げた英二さんは、きっとおばあさんに申し訳なさを抱いているのだと思う。


以前までは、家族のことになると冷たく突き放すような態度を見せていたけど、彼だって家族を悲しませたいわけではないはず。


ただ、叶えたい夢や目標があって、それが家族の希望とは違っていただけ。


間違ったことをしなければいつだって応援してもらえる環境で育った私とは違って、英二さんの家庭では自分で将来を決めるというのは普通のことではないのだろう。


「でも、俺はもうあの家に戻るつもりも茶道の道を歩むつもりもないから、これからはどれだけ時間がかかってもちゃんと伝え続けていこうと思ってるんだ」


それでも、彼はゆっくりと目を閉じたあと、迷いなんて微塵も見せずに揺るぎない瞳と落ち着いた声音ではっきりと紡いだ。

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