狡猾な王子様
「冬実ちゃんならそう言うと思ったよ」


申し訳なさと呆れが混じった苦笑で、「でもね」と続けられる。


「そういうわけにはいかない。これはけじめでもあるし、償わせてほしい。そうじゃないと、俺は次の恋愛に進む資格もないから……」


そういう言い方はずるい。


惚れた方が負けだなんて言うけど、本当にそうだと思う。


現に、心の中では受け入れるしかないと考えてしまっていて、拒絶できそうになかったから。


狡猾なこの人に恨み言のひとつでも言いたいのに、口を開けば想いが零れてしまいそうで怖かった。


だけど、こんな状況であっても、英二さんを好きになったことだけは後悔したくはないと思う。


どんなにつらくても悲しくても、そして想いが実ることがなくても、ほんの少しくらいは得られたものだってあった。


変わりたいと思っていただけの日々から抜け出して、ささやかなものかもしれないけど、私は変われたと思えている。


だから、それだけで充分だと、半ば強引に自分自身に言い聞かせようとした。

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