狡猾な王子様
「これが素直な気持ちだけど、散々ひどいことをしておいて今さらどの口が言うんだ、って思ってる」


真剣な口調で紡がれた言葉が、心に深く刺さる。


「最低なところも何度も見られてるし、そういう記憶はたぶんずっと残ってしまうだろうから、もし仮に付き合えたとしても、冬実ちゃんを傷つけるばかりなのかもしれないとも考えた」


ただ、悩ましい表情を見ていると、手放しで喜んでもいいのかわからなくて……。


「でも……もう、みちるの時みたいなことは繰り返したくないんだ」


英二さんの気持ちは本当に嬉しいのに、笑顔にはなれない。


「自分勝手なのはわかってるから、冬実ちゃんの気持ちが変わったのなら無理強いはしたくない。だけど、今話した気持ちは全部俺の本音だから、叶うなら冬実ちゃんの傍にいさせてほしい」


それでも、胸の奥にじわじわと広がっていくのは優しい温もりで、この感覚が喜びであることはわかっていた。


彼は緊張の面持ちで私を見ていて、今まで以上に慎重に言葉を探しているようだった。

< 363 / 419 >

この作品をシェア

pagetop