狡猾な王子様
幸か不幸か、もともとあまり渋滞することのない道がいつも以上に空いていて、予想していた時間よりも早く木漏れ日亭に着いてしまった。
今の私にはアンラッキーにしか思えない状態にため息を吐き掛けた時、駐車場の一番端に車が停まっていることに気付く。
英二さんが買い替えたわけではないのなら、それは彼以外の人が店内にいることを物語っていて……。
緊張で張り詰めていた気持ちが、ほんの少しだけ緩んだ。
訊きたいことを訊くだけの勇気を持ち合わせていない私は、今日は一刻も早く帰ろうと決めてドアを目指す。
トマトの箱を片手に木造のドアに手を掛けようとした瞬間、僅かにペイントの剥げた丸いノブが勝手に動いた。
慌てて笑顔を繕って、『こんにちは』と紡ごうとしたけど……。
顔を上げた直後に視界に入って来た人物に目を見開いて、動かし掛けていた唇は止まってしまった。
「あら」
そんな私を余所に、おもむろに一度だけ瞬きをした女性の長い睫毛がフワリと揺れる。
今の私にはアンラッキーにしか思えない状態にため息を吐き掛けた時、駐車場の一番端に車が停まっていることに気付く。
英二さんが買い替えたわけではないのなら、それは彼以外の人が店内にいることを物語っていて……。
緊張で張り詰めていた気持ちが、ほんの少しだけ緩んだ。
訊きたいことを訊くだけの勇気を持ち合わせていない私は、今日は一刻も早く帰ろうと決めてドアを目指す。
トマトの箱を片手に木造のドアに手を掛けようとした瞬間、僅かにペイントの剥げた丸いノブが勝手に動いた。
慌てて笑顔を繕って、『こんにちは』と紡ごうとしたけど……。
顔を上げた直後に視界に入って来た人物に目を見開いて、動かし掛けていた唇は止まってしまった。
「あら」
そんな私を余所に、おもむろに一度だけ瞬きをした女性の長い睫毛がフワリと揺れる。