秘蜜の秘め事
彼が呼ぶのを聞かずに、逃げ出した。

怖くて、もうよくわからなくて、逃げ出した。

転がるように自宅の玄関に逃げ込んで、その場に座り込んだ。

「――あ…靴…」

足元に視線を向けたら、靴下が汚れていることに気づいた。

古沢さんから逃げるのに夢中で、靴を忘れてしまった。

わたし、何やってるのよ…。

古沢さんを突き飛ばして、逃げて、そのうえ靴まで忘れちゃって…。

「――もうヤだ…」

赤茶色のパーマがかかった髪。

髪の色もパーマも、全て生まれつきだ。

それを両手でクシャクシャにする。
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