青い猫の花嫁
それからお屋敷を出ると、門のところで爽子と松田君の姿が見えて、思わず足が止まってしまった。
ふたりはあたしに気付いて、こちらに駆け寄ってきた。
「立花!」
「真子ちゃん、大丈夫?」
ガッチリ肩を掴まれて、体を思い切り揺さぶられた。
「え、え、ちょ、なに?」
視界がグルグル回る中、切れ切れにそう言うと、爽子が不安げに覗き込んできた。
「正宗さんに何もされてない?なんかされたんでしょ?」
「何かってなに?何もされてない、話してただけだよ」
「ほんとに?」
またガシガシと肩を揺らした爽子に、思い切り首を縦に振って応えた。
「はあ、ほんと焦ったよぉ。廉さんたら、すぐ帰ってきて真子ちゃんは正宗さんに拉致られたって言うんだもん」
「拉致?なにそれ」
……てかどこかで聞いたセリフ。
ハッと思い出して、辺りを見渡した。
「爽子、トワは?」
「へ?」
「トワどこにいるの?」
今度はあたしが爽子の肩を掴む番。
驚いたように目を見開いて、爽子が口を開きかけたその時。
すぐ後ろで声がした。
「俺なら、ここだよ。真子」
あ、いた……。
ナギさんにどこか連れてかれちゃったかと思った。
あからさまにホッとした自分に驚いて、落ち着かない気分になる。
う……、さっきの正宗さんの言葉が、頭の中で渦を巻く。
『結ばれる事です』
ブンブンと首を振るあたしを見て、トワが不思議そうに首を傾げた。