青い猫の花嫁



「はあ……びっくりした……」


ほんと、心臓に悪い。
トワって、いきなり人前であーいう事するんだもん。

よくわからないな……。


「ふふ。ほんと藍原くんって素直だよね。でも、無自覚なとこが罪ってゆーか。真子ちゃん大変だ」


みんなで座っていたテーブルを離れた、あたしと爽子。
カウンターに移動して、廉次さんが入れてくれたハーブティを試飲させてもらっていた。


「ほんとだよ。って、やっぱりアレ無意識なのかな」


クスクスと肩を揺らす爽子に、思わず身を乗り出した。

と、その時、楽しそうな笑顔を浮かべた廉次さんが厨房から現れた。


「なになに?なんの話?」

「あ、廉兄。聞いてよぉ、藍原くんったらね」

「さ、爽子!」


あ……。

甘い香りに、誘われて視線を落とす。
キツネ色に焼けたジンジャークッキーが、目の前に置かれた。

わあ、美味しそう。

って、廉次さんのお店にいたら、いつもよりたくさん食べれて太っちゃいそうだ。


あたしが目の前のクッキーに目を奪われているうちに、爽子がさっきのいきさつを廉次さんに説明していたらしい。


「ほうほう。トワくんってば独占欲丸出し。よっぽど真子ちゃんが大事なんだね~」

「ええっ」


ハッとして顔を上げると、カウンターに腕を乗せてあたしを覗き込む廉次さんと、うんうんと納得する爽子。

その向こう側に、いつの間にか総司朗先生までいて。
チラリとあたしを見ると、また手にしたコーヒーカップに口をつけた。


「……」


ひええええ!

先生にも聞かれてたのぉ?

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