すっぴん★

部屋の前で俊介は、下を向き暫しはーはーと呼吸を整えていた。


「ここが、すっぴん美人のこてこて御殿。腰を抜かしたらあかんで」


かおるは自宅の前に着くと、いやに元気。先程までふらふらしていた
のが、嘘の様。


俊介は呼吸が荒く、かおるの声がしても目を上げる事が出来なかった。


(すっぴん美人のこてこて御殿)


俊介の意識の遥か向こうから、耳慣れない言葉が微かに聞こえて来る。


(こてこて御殿!)


(どんな御殿だ。どうせこてこてのお化け屋敷だろう)


呼吸が整う間、俊介は下を向いたままよからぬ事を考えていた。



ガチャン。



かおるが部屋の鍵を開けた。

荒い呼吸が治まり、俊介が視線を上に上げようとした。その時、靴箱
のような箱が、俊介の足元にどかどかっと倒れて来た。

かおるが部屋のドアを開けた時、ドアによっ掛かっていた靴箱の山が
崩れたみたいだ。

 「いったこの箱は?」


俊介が思わず声を発した。そして、靴箱から視線を上に上げた。






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