すっぴん★
俊介は呆れに呆れ、思考力を無くして、ただただ棒のように立ってい
た。
そこに、また、またである。かおるの魔の手が伸びて来た。
恐怖。冷や汗。金縛り。
生温かいかおるの手は、俊介の手を摑むと、うむを言わさず俊介をベ
ッドの上に座らせた。
蛇に睨まれた蛙。
俊介は潔癖症である事も暫し忘れ、ただただベッドの上で身を縮め小
さくなっていた。
「この部屋に入って来たのは、あんたが初めてやわ」
かおるは、いと感激深そう。
「ぼ、僕が」
俊介が親指で自分を指差した。
「そうや」
「運命の人かな」
かおるが俊介を粘っこい目で見詰めている。
「・・・」
(やばい。やば過ぎる)
俊介は困惑しきり。
「酔いは大丈夫なの」
咄嗟に、俊介が話題を変えた。