すっぴん★

俊介はリュックの中からウエットティシュを取り出し、テーブルを
その数枚で丹念に拭き出した。

「ああ、さっぱりした」

「呆れた・・・」

素が俊介にも聞こえそうな声で、呆れたという言葉を口から出した。

素に超潔癖である事を知られ安心したのか、俊介がいつもの自分を
見せ出したのだ。


そこへ、ウエイターが栓を抜いたワインのボトルと、グラスを運ん
で来た。

「ワインバーはボトルを頼めば、一本飲みきり。マイグラスさえあ
れば、安心して飲めるという訳。だから、僕はこの店が気に入って
いるんだ」

「そうなんだ」

マイグラスにワインを注ぐやけに幸せそうな俊介を見て、素は妙に
可笑しかった。



「可愛そうな性格だね。それなら、恋人選びも大変でしょう」



「分かってくれる。俺って、不潔な女性は生理的に拒否反応がビビ
ーン。たとえば、頭の毛を触ると、ふけがぱらぱらぱらと、まるで
雪のように落ちる女性。見ているだけでジンマシンが出そう。ああ、
考えただけでも、気持ちわりぃ」


「・・・」

俊介がいかにも気分が悪そうな顔をするので、素は内心可笑しかっ
た。





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