すっぴん★

「ええ。本当にお世話になりました」

素が沙樹に向って礼を述べると、二人は高橋の自宅を出た。


深夜の街は、昼間の街とは違う別の顔を持っていた。
薄暗くシーンと静まり返っていた。


5分ほど歩くと、高橋が立ち止まった。
高橋は素の目の奥を、何か目的でもあるのか、覗くように見詰めてい
る。



「白井!」



高橋が呻くように声を上げた。

「えっ」

素は、反射的に身体を硬直させた。


「私と・・・」


高橋が、そこで言葉を詰まらせた。

「私と何?」




「私と付き合わない」





高橋が、心の中に湧き上がる感情を思い切って吐き出した。






< 85 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop