すっぴん★
「ええ。本当にお世話になりました」
素が沙樹に向って礼を述べると、二人は高橋の自宅を出た。
深夜の街は、昼間の街とは違う別の顔を持っていた。
薄暗くシーンと静まり返っていた。
5分ほど歩くと、高橋が立ち止まった。
高橋は素の目の奥を、何か目的でもあるのか、覗くように見詰めてい
る。
「白井!」
高橋が呻くように声を上げた。
「えっ」
素は、反射的に身体を硬直させた。
「私と・・・」
高橋が、そこで言葉を詰まらせた。
「私と何?」
「私と付き合わない」
高橋が、心の中に湧き上がる感情を思い切って吐き出した。