満月の人魚
その時、二人の耳に5限終了を知らせるチャイムの音が聞こえてきた。

瑠璃ははっと我に返る。

ー教室に戻らなければー

いつまでもこんな場所で二人きりでいたら、また濱田に何をされるかわかったものじゃない。

出入り口に歩き出そうとした瑠璃の腕を、丈瑠が掴んで引き留めた。

先程の笑顔は消え去り、鋭い目をしている。

「昨日のあの薬、もう飲まない方がいい。」

「……え?…なんで?」

「記憶障害を誘発する成分が検出された。確かに睡眠薬や安定剤としても使用されるが、お前、昔の記憶が曖昧なんじゃないか?」

丈瑠の言う通りだ。

瑠璃は言葉を失った。


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