満月の人魚
「…瑠璃、聞いてくれ。この先にある駅から、N県に向かう電車が出ている。瑠璃は朝になったらその電車でN県に向かうんだ。必要な物はリュックに入っている。何も心配はいらない。」

丈瑠は瑠璃の瞳を真っ直ぐ見つめながら、真剣な顔で一気に告げる。

いつもの意志の強さを感じさせるその瞳が、今は少し翳って見えた。

「…N県には行くわ。あなたと一緒に。」

瑠璃も毅然とした態度で告げる。

丈瑠を置いて何処かに行ったりなんかしない。

「……俺がいなくても行くんだ。」

「嫌よ。」

目頭が熱くなって涙が滲んでくる。

丈瑠が最期を覚悟している事が、とてつもなく悲しく切ない。
< 95 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop