ロリポップ
「誰だと思ってたのよ、さっきまで友華が恩田君の話してたんじゃない。関係あるのかないのかって聞いてきといて」


「そうだけど、あれは噂話の事で。事実なら仕方ないかなって思ってただけよ。音羽のキスしたい相手の話とは別じゃない」


 まあ、言われればそうだけど。


「何とかって後輩の子には、友達って答えたって言ってたのに。違ってたわけだ?」


 明らかにこの会話を楽しんでる友華に、冷めた視線を向けて、それなのよね・・・と溜息をつく。
 確かにあの時は、友達のような関係だと思っていた。
 

「まあ?言われてみればそうかなって思わなくも無いよね」


「何が?」


「音羽が恩田君に何となく、心引かれてるのは思ってたし。それが好きかどうかなんてのは分からなかったけど」


「いつから!?」


 自分でそうかも・・・と自覚したのは一昨日のこと。
 本人でさえも気がつかない事を、友華は気がついていたって事?
 エスパー?


「私は最近、かな。瑛太は最初からなんじゃない?じゃなかったら、居酒屋で瑛太が音羽を置いて帰ったりしないでしょ。健成なんか全くあてにならないのに。音羽の感情の動きに気がついたんじゃない?そういうの敏感だから」


 それはそれでなんか、嫌だ。
 瑛太に私の心がスケスケとか・・・考えたらちっとも嬉しくない・・・。
 むしろ恥ずかしくて堪らない。


「でも、まだ、好きかどうかまでは自信、ないかも」


 小さく呟く私の独り言のような言葉は、友華の耳に届いていたみたい。



「乙女チック症候群か?」


 とからかう。
 本当、笑っちゃうよね。
 好きかどうか自信ないとか、口走っちゃうあたり病気だよ。
 

 まさに、乙女チック症候群。
 
 恋するのが怖いなんて言ったら、ますます笑っちゃうよね。

 この甘い疼きを知るのが怖いけれど。

 大人な私は、知らなきゃ前に進めない事も知っている・・・・・。


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