ロリポップ
「ただいま~」

 見慣れた玄関を開けると、

「おかえりなさい」

 と母が出迎えてくれる。
 部屋にはすでに帰って来ていた父と兄達がコタツに座って、みかんを食べている。
 なんか、三人がおんなじ様にみかんの皮を剥いている姿が同じで、親子だなって笑える。


「何笑ってるんだよ、音羽」

 長兄の元兄さんがみかんを口に入れながら、笑う私を見上げる。

「早く座れよ」

 次兄の歩兄さんが座れよとポンポンとコタツ布団を叩いた。

 
「寒かっただろ?早く温まりなさい」

 父の言葉に私は頷いて、コタツに足を入れる。

「皆そろったわね、今晩はすき焼きにしようかしら」

 母の明るい声が台所からして、兄達は「賛成~」と手を上げた。

 いつもの光景。

 いつもの会話。

 いつもの家族だ。

 離れていても、帰ってくればすぐにいつもを取り戻せるここは、やっぱりいいなって、思わずにはいられない。


「音羽、いつまで休み?」

 元兄さんが何個目が分からないみかんを剥きながら聞く。

「4日まで。兄さんは?」

「俺は学校が始まるから8日からだけど、色々準備とかもあるし。実質の休みは三が日くらいだな。歩は?」

「俺も4日から仕事」
 
 テレビを見ながら、器用にかごのみかんを取りながらそう言った。

 元兄さんは小学校の先生、歩兄さん市役所の職員で、今は実家には住んでいない。

 二人とも隣町に住んでいる。

 家族5人が揃うのはお盆とお正月くらいだけど、一瞬にして一緒に暮らしていた頃に戻る空気にホッとする。
 普段から別に気を張って仕事をしているとかでもないけど、少なからず肩肘張って生きているんだなってこういう時に思う。
 いつでも自分を受け止めてくれる家族の存在が。
 ゆっくり羽を休めなさいって言ってくれるようで、安心できる。

 色々考えるのはもう少し後にしよう。

 今はゆっくりしたい。



 
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